ひきこもりの作法

一本、また一本…集めた後ろ指の数はアイドル級。悩み多き某ひきこもりによる孤軍奮闘の日々がここに。

menpal(メンタルヘルス用友達募集サイト)を一年間利用してみた感想。

 

そもそも…menpalとは何なのか?

この広いネットの海の片隅に…

menpal(メンパル)という名の珍しいサイトがあります。

主にメンタルヘルス(精神疾患)を持つ者を対象とした、友達募集サイトです。

 

サイト案内によると「心の悩みや生きづらさを抱えた方ならどなたでも無料でご利用いただけます」とされていること。それから募集用のタグにも「診断あり」という種類があることから、精神疾患の診断を受けていない場合でも利用が認められていることがわかります。

 

私自身も精神病の診断名は無く、純粋に社会的な「ひきこもり」という立場に陥っている者ですが、他にこうした性格の募集サイトがなかなか存在しないため、長年ありがたく活用させていただいております。精神病患者の多さやひきこもりの多さが社会問題として取り上げられることも当たり前になってきた昨今でありながら、その手の層へ向けた募集サイトがほとんど存在していないというのは少し不思議です。

 

古参ユーザーなら知っていますが、menpalは元々はMHTB(メンタルひきこもり友達募集)というサイト名で運用されていたという過去があります。ところがここ最近の刷新によって、サイト名から「ひきこもり」が除外されてしまった点、名前の語感やサイトデザインが精神疾患を想定しているにしてはややライトで大衆的な印象になってしまったことは個人的に寂しく感じています。

 

 

menpalを一年間使ってみた男の手記

さて、ここからは、実際に一人のひきこもり当事者としてmenpalを利用してみた感想というものを、思いつく分だけ書き綴ってみようと思います。後続ユーザーの参考になったり、ひきこもりや精神疾患の方がこの記事をきっかけにmenpalに興味を持っていただけるならば、自身もまたその1ユーザーである身の上、嬉しく思います。

 

まず触れておきたい前提として、MHTB→menpalへの刷新によって、募集文に入力できる文字数に厳しい制限が掛かりました。以前はたしか1000文字くらいは打てた筈ですが、今ではこれを400文字以下に納めなければいけません。そうなると、打つ側も内容をかなり削る必要があり、精神疾患やひきこもりに至るまでの来歴を書くことが難しくなったと思います。そして、見る側も少ない文字数の中から気が合いそうな相手を見定める必要があり、人探しのツールとしての利用難易度は"MHTBから大幅に向上している"ことを体感しています。

 

文字数が減ったせいか、MHTB時代のように真面目で深刻な雰囲気の募集文を書く人はほとんど居なくなったように見えます。結果的に各人があくまでも簡易な自己紹介に留まっており、そのこともまたサイト全体を「ライトな印象」に寄せた一因になっていそうです。

 

募集を見て応募する側としては、400文字一杯にまで書かれている募集文を読んでも結局その人が「どういう人物なのか?」がよくわからないことも多く、そのわからなさが絶妙に恐怖感に繋がって手を出しづらい…ということが多い気がしています。わかるほど親しみが湧き、わからないほど恐怖が湧くのが通常の人間心理だとも言われています。

 

↑私の募集文といえばこの通り。今は文字数が厳しくなったので尚更、無造作に人を呼び込んでしまってはいけないと思い、意図的にかなり対象を絞った雰囲気に仕上げています。

 

menpal開始以来ずっとこんな風で募集を繰り返してきましたが、連絡をいただける数は一度更新をする度に良くてもせいぜい1件、それ以外は0件が普通といった閑古鳥の鳴きっぷりです。ちなみに、私はMHTBでも同様の雰囲気で募集してきており、その時は良くて一度に5件くらいの連絡が来ていたことと比べると、かなり反響が減ったなと感じざるを得ません。

 

私はMHTB時代から懲りずに活動を続けているだけあって、その地続きとなるmenpalでも既にだいぶ知り合いの方が多い状態にあり、それもあって皆さんからmenpalについての所感を自然とお伺いする機会は多いです。そこでは「募集文を一切読んでくれていない人が来た」「何度か返信をしただけて、その後ピタリと音沙汰無くなってしまった」という失敗体験は多く、そして女性フレンドさんの場合は「よくよく話を聞いてみると相手は所謂"出会い厨"だった」という事例が結構な確率で起きています。そういう私自身も、何度か挨拶のやり取りをした後はこちらから声を掛けても相手からの反応が無くなってしまった…という展開を数え切れないほど味わっています。

 

これらについてはMTHB時代から相変わらず、利用者各位は初めから重々に覚悟をしておかなければならない「ネットの募集サイト全般の混沌さ」だと思います。特にmenpalは精神疾患者に特化しているだけあって、気分の浮き沈みが激しい方や、症状が重い方の比率が自然と多くなってきて、一般のネット募集よりも更に不安定になっていることが予想されます。

 

menpalから利用される初心者の方々への率直な助言としましては、第一に「期待しないこと」を提案させていただきます。上手く行かないことの方が普通なのです。その上、上述したように文字数の制限によって募集文から浮かび上がる人物像は解像度がかなり低くなっており、勇気を振り絞って応募しても「思っていた人と違った」という事例が高確率で発生するようになっています。

 

自ら募集を出す側としましても、最初に数回やり取りするメールやメッセージで危ない気配、怪しい気配を感じる場合はすぐに切り上げて次の相手に目を向けた方が良いのではないかと思います。人探しをする内にただでさえ病んでいる自分自身が潰れてしまっては本末転倒なので、リスクはなるべく避けて通った方が良いと思うからです。もしかすると、かくいう私自身も、まさにそのような判断から「回避」されているだけなのかも知れませんね(苦笑)

 

 

menpalを利用する揺るぎなきメリット

以上、色々とmenpal利用の難しさばかりを書いてしまいましたが、勿論、色々な長所もあります。一つ目は何より「サイト自体が一つの居場所になる」ということです。精神疾患やひきこもりとして生きておられる方であれば、やはり世間一般の空間では非常に肩身の狭いを想いをされている筈で、自分の居場所の無さというものに絶望し、打ちひしがれることも少なくはないでしょう。menpalのような特殊な募集サイトはそれを広い懐で受け入れて、同じように苦しむ仲間を見付けられる「居場所」を常に提供してくれます。

 

二つ目の長所は、募集を出しておくことで「常に新しい出会いへの期待が伴う」ということです。人間はどうしても気を遣わなくて済む既存のコミュニティや人間関係に固着してしまう傾向があり、そうなるとだんだんと視野が狭小になってきてしまうものだと思います。それを打開してくれるのが「新しい人との出会い」であって、これによって襟を正して人と向き合うことを改めて意識したり、気が合わない人間との遭遇があることで、既存の人間関係がいかに有難いかが改めてわかったり、知らない人と会話をする能力を正常に保てるなど、複数の功利が齎されます。新しい出会いのきっかけを持っておくこととは謂わば、「締め切った部屋の窓を開け、換気をしておく」行為なのだと思います。

 

三つ目の長所は、「人探しをすることで、様々な気付きがある」ことです。menpalを使い続けている内に、見る側としてどのような募集文が悪印象であり、好印象であるのかがだんだんと感覚でわかってきます。そこで得たちょっとしたコツのようなものを、今度は自分が募集文を書く側として活かせます。そしてその募集文の内容によって、連絡をしてくれる層や、反響の度合いは様々に変わってきます。自分にとって最も望ましい層を探し続ける内に、丁度良いやり方がわかってくるわけです。全く反応が無ければやはり落ち込みますし、沢山反応があっても自分の気質とはかけ離れた層からであればやはり負担になってしまうことでしょう。どのように書けば狙った層に響くのか。そのように、「自分の発信を客観視する」ための貴重な機会にもなり得ると思っています。

 

 

おわりに

以上、お粗末なものではございましたが、私という一人のひきこもりが一年間menpalを利用して得てきた所感というものを包み隠さずにお伝えさせていただきました。何らかのお役に立てれば幸いです。

 

ネットを利用した友達募集とは一般層にとってもままならないものなので、メンタル持ちやひきこもりの方にとっては尚更厳しい道になるだろうとは思います。

 

それでも、やっている内に気付けることも多いですし、「友達募集サイト」という形式に拘らなければ他にも色々なやり方があります。例えば、ディスコードやLINEなどの手軽なコミュニケーションツールを用いて、サーバーやグループ単位で人探しをするという手段です。

 

人生に困難はつきものですが、「自分と合う人を探し続ける」という姿勢で居ること自体が最も大切なのものだと私は思います。それは、潜在的にお互いを求めている少数派の人間が居るとして、せめてそのどちらかが行動を起こさねば何もきっかけが無いからです。

 

なので是非、不足感がある内は諦めずに探し続けて欲しいと思います。その胸中に佇む得も言われぬ寂しさとは、あなたに見付けて欲しい誰かからの声なき呼び声なのかも知れません。

 

余談ですが、まだmenpalが「MHTB」だった時代の記事でも同様の体験談を公開しております。ご興味のある方は併せてこちらもいかがでしょうか↓

 

horo9.hatenablog.com