ひきこもりの作法

一本、また一本…集めた後ろ指の数はアイドル級。悩み多き某ひきこもりによる孤軍奮闘の日々がここに。

ひきこもり不動禄vol.10「寂しさの時間」

寂しさの時間

ひきこもりの私は現在、専ら「Discord」というアプリを使ってインターネット上で他者と交流をさせていただいているのですが、そんな中でも時折、強烈に寂しさを感じる時間というものが訪れます。

 

それは特に昼間なんかが多めで、「知り合いが誰一人してオンラインになっていない」「知らない人と話そうにも、そっちでも人が居ない」という状況下で起きてきます。何だか自分一人だけがポツンと世界から切り離されて存在しているような、もっと言えば「残念ながら、君は元々そうだったのだ」という恐ろしい現実を突き付けられたSF最終章のような、それはもう胸一杯に寂しさが流れ込んでくるものです。

 

かつて、ネットゲームだけが唯一他人との交流の場だった時代。

見事に昼夜逆転していた当時の私が、真夜中にゲームにログインしたところ、フレンドはおろかユーザー自体が不在であり、いつもの何倍にもだだっ広く感じられる交流広場の光景がそこにはあって、そんな時にもまた強烈な寂しさを覚えたものです。

そうなるともう仕方が無いので、渋々とゲーム内のアイテムを整理するだとか、もっと重症になってくると日中にフレンドたちと会話をしたフィールドを訪れて、そういえばちょうどこの辺りだったとか、この角度だったとか、こういう話をして笑っただとか、あの人はもっと話し掛けておけば良かったとか、そのような小さな思い出を掘り起こしては、寂しさを凌いでいたものです。「みんな早く起きてくれば良いのに……」なんて思っている内に、いよいよ登ってきた朝日と共に、今度は私が眠りに就くわけですが(笑)

 

それにしても、私が遊んでいたゲームには時間経過の概念が搭載されておらず、真夜中にログインしてもフィールドが明るい日中のままだったのは、なかなか乙なものでした。現実世界が夜暗に包まれ、人々が小さな寝息を立てている頃に、まるでその世界だけが時間流から取り残された時空の廃墟であるかのように、或いは記憶の中でいつまでも変わらない景色のように、風さえも吹かずに明るいままで静まり返っていたのですから。

 

これまで生きていた経験上、「寂しい時間が無い」というのは、絶対に実現不可能であることを思い知ってしまいました。これからも私は定期的に、ふと訪れる胸いっぱいの寂しさを感じ続けることでしょう。それはもはや受け入れるとして、せめて私は「時間流から切り離された空間の管理人」として、迷い込んでしまった少年少女らを温かく迎えてあげようと思います。妙な話ですが、私は小さい頃からそういった人間離れした摩訶不思議な存在になりたがっていた気がするのです。

 

そういうわけで、「時間流から切り離された空間」でもしお会いするようなことがあった際は、何卒よろしくお願いいたします。亜空間からかつての世界を眺めながら、一緒に思い出話にでも花を咲かせましょう。無尽蔵に花咲けば、それはもはや天界の情緒でありましょう。